ほんの数年前まで、ターミナル駅の自動券売機には常に長蛇の列ができていたが、SuicaやPASMOなど、ICカードが普及したことにより、“紙の切符”を買う人は今やすっかり少数派。近い将来、紙の切符がなくなる日もやって来るかもしれない。鉄道各社がその利便性を積極的に宣伝にしていることもあり、おトクなことばかりと思われがちなICカードだが、実はICカードを使うより切符を買ったほうがトクなこともある。
もともとICカードと切符の料金は同額だったが、これを崩したのが2014年4月に行われた消費税増税。首都圏の多くの鉄道会社が、増税分を正確に転嫁するため、これまで10円単位だった料金制度を改め、ICカードについては1円単位の料金制度を導入。これにより、133円、144円、165円といった額の料金が発生することになった。
一見すると、10円単位でなく1円単位で増税分が料金に反映されるICカードがおトクに思えるがそうとも言い切れない。例えばJR東日本は、切符に対する増税分の転嫁については、2パターンのルールを採用している。券売機は1円玉や5円玉に対応していないため、これまで通りの10円単位の料金制度を残し、増税分を転嫁した新価格で生じた端数について、
・電車特定区間では「切り上げ」
・その他の区間では「四捨五入」
というルールである。電車特定区間とは、首都圏でも特に利用者が多い区間のことで、おおよそ、大宮、取手、千葉、久里浜、高尾より都心よりの区間が含まれている。