〈美女はみんな使っていた──もしも無人島にひとつだけ持って行くなら「ヒルドイド」!〉
こんな見出しが女性ファッション誌を飾ったことがあるように、ヒルドイドは保湿薬以上の効果がある“究極の美容液”のように扱われ、世の女性たちを虜にしている。前述の女性ファッション誌でも、〈シワが薄くなった〉〈手荒れが改善〉という魅惑的な言葉が並び、ネットでも〈究極のアンチエイジングクリーム〉〈3万円の高級美容液に匹敵する〉と絶賛の嵐。さらに梨花(44才)や中村アン(30才)など、美のカリスマたちも愛用していることもブームを助長した。
「デパートで売っている高級クリームよりもいいって聞いて、子供用にたくさん処方してもらって、私も一緒に使ってみたら、お肌にハリが出たような気がして、もう手放せません」(42才・主婦)
彼女のように評判を聞きつけて、処方を求めて病院を訪れるケースが後を絶たない。都内で暮らす36才主婦は、ヒルドイドを頼る理由をこう語る。
「やっぱり安く手に入るのは魅力ですよね。もうもったいないと思って、今まで使っていた高級クリームは買えません」
25gのチューブ型クリームであれば、1本あたりの薬価は約590円。ヒルドイドは保険が適用されるので、3割負担分の175円ほどで手に入る。診察料を支払っても3万円の美容液より、はるかに低価格だ。だが、この状況によしき皮膚科クリニック銀座の吉木伸子院長は警鐘を鳴らす。
「あくまで薬は『治療目的』と医師が診断した場合のみ、国民の健康を守るために保険を適用して処方するものです。自己負担以外は国民が支払っている保険料や税金で賄われているわけですから、美容目的で使用することは本来認められません。
しかも、ヒルドイドの保湿効果は高いですが、しわをなくすなどの美容効果はありません。またヒルドイドは化粧品と違って顔専用のものではなく、油分も多めに含むため、顔に塗ると、人によってはニキビが出ることもあります」
ヒルドイドの製造元であるマルホも美容効果を煽る記事が掲載されるたびに注意喚起を行ってきたが、この流れが止まることはなかった。