競技人口が増えたことで新たな「カネ」の問題も
技術と環境の向上でさらに白熱するフィギュア界だが、その裏には私たちが目にすることのない苦悩もある。
まず「カネ」の問題である。伊藤みどりの時代から、フィギュアスケートは「カネ」のかかるスポーツとして有名だったが、その傾向はさらに強まっている。その代表例がシューズである。
「以前は1足2万円前後が相場だったシューズの値段は、フィギュアブームの影響からか高騰し、今は5万円ほど。トップを目指す選手であるほど、優れた品質のシューズが必要となり、1足10万円もする、さらに高額なシューズを履いています。
しかも、今は高度なジャンプを跳べなければ世界と戦えない時代に突入したため、ジャンプの練習が増えている。そのため、以前なら1年に1度買い替えていたものが、4か月程度に短縮されました。確実に金銭面の負担は増しています」(あるジュニアの指導者)
競技人口が増えたことも新たな「カネ」の問題を引き起こしている。
「練習用のスケートリンクの絶対数が不足しています。カナダ・トロントには冬場、100近いリンクがありますが、東京の通年リンクはわずか4つだけ。カナダに比べ、気候が温暖な日本は、リンクの運営費がかさむため、これ以上増やすことができない。結果、少ないリンクを多くのスケーターが奪い合うことになってしまった」(野口氏)
フィギュア界全体のレベルが底上げされた今、練習量を増やすことが実力向上には必要不可欠である。
「トップを狙う選手たちは、ライバルたちより1秒でも多い練習時間を確保しようという強迫観念に駆られて、以前は週に1回程度だった“スケート場の貸し切り”を連日行うようになった」(前出・あるジュニアの指導者)