「まずは就職活動の時。『趣味はブレイクダンスです』と言って、誰かと被ったことは一度もありませんでした。面接官もみな、ブレイクダンスの存在は知っているものの、ブレイクダンスをしている人には会ったことがないようで、『頭でクルクル回るヤツができます』と言うと、反応は良かったです。
金融機関の面接では、『ブレイクダンスという趣味が我々の仕事とどう結びつくのか?』といった趣旨の質問をされたので、ダンス人口が増えていること、それに比して練習する場所が足りないので、需要が生まれるであろうということを話しました。実際にその後、ダンスが中学校の体育の授業に取り入れられるようになったので、先見の明はあったということです」
そういったやりとりが功を奏したのか、結果的に大手都市銀行に入ることができたHさん。入社後も、社内で顔を売るのにブレイクダンスが役立っているそうだ。
「会社の納会や結婚式の余興では、上司に必ず『ブレイクダンスをやれ』『ヘッドスピンをやれ』と言われるので、ヘルメットは必須アイテムです。初めて見た人からは、間違いなく『オーッ!』と歓声が上がるので、今ではヘッドスピンをやれるスペースがあるかどうかを真っ先に確認するようになりました。
年輩の上司は眉をひそめるかと思いましたが、下品でもなく、見慣れたものでもないのが良いのか、概ね好意的な感想を持つようです。やり終わった後は、普段は話すことがないような上の人と話すこともあるので、さり気なく『簡単ではない』ということをアピールすると、“デキるやつ”と思ってもらえるようです。
また個人的には、ヘッドスピンをすると体型の変化が一発で分かるので、自然と太らないように気をつけるようにもなります」
今では駅や高層ビルでなく、スタジオで練習するようになっているそうだが、それでも1回あたり2000~3000円、1月あたりせいぜい1万円で済むとのこと。ただし最近老眼が始まってきてしまい、「踊る時にメガネをどうするか?」がもっぱらの悩みだそうだ。