「○×税務署です。相続税の件でお宅にうかがいます」──国税局の“相続税マルサ”は忘れた頃に突然現われる。それはこの1本の電話から始まる。「臨宅(りんたく)」と呼ばれる実地調査の通告で、故人が亡くなって2年ほど経ち、遺産相続の手続きがとっくに終わってから行なわれることが多い。
現在、東京都内の居住者が亡くなれば10人に1人、地価が高い23区内の居住者なら5人に1人に相続税がかかるとされる。相続税を申告しなかった「無申告」のケースにもしっかり網がかけられる。
死亡届が出されると、区役所や市役所から税務署に連絡が入る。税務署は管轄内の死亡者をほぼ100%把握し、故人に土地や家などの不動産資産があれば相続税の課税対象かどうかすぐわかる。国税OBで東京都内の税務署の資産課税部門を歴任した税理士の武田秀和氏が語る。
「相続人の中には、株や預貯金など金融資産までは全部わからないだろうとタカをくくって申告しなかったり、過少申告したりするケースもありますが、国税局はKSKシステム(国税総合管理システム)で個人と法人の株や不動産取引から給料の支払調書、確定申告など膨大な財産情報を収集している。誰かが亡くなればそのデータを駆使して相続税が課税されるか判定します」