外国人が日本で大量に買い物をする“爆買いツアー”が成立するのは、高品質製品を求めるだけでなく、価格の安さも理由だという。日本で生活する人の給料が上がらないため、それに合わせて商品の値段も据え置かれているからだ。日本人の低い給料を上げるにはどのような対策を採ればよいのか、経営コンサルタントの大前研一氏が提言する。
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日経平均株価が歴代最長の16連騰を記録したり、バブル崩壊後21年ぶりに最高値を突破したりと株高が続き、来年は3万円台が視野に入るとの見方もある。だが、株価は「企業の将来収益の現在価値」である。たしかに今期の日本企業は好決算の予想が相次いでいるが、今後も株価が上がり続けるほどの将来性があるかといえば、大きな疑問符を付けざるを得ない。
そもそも、現在の株高は政府のPKO(株価維持策)による人為的なものであり、異常な「官製相場」である。報道によると、日本銀行のETF(上場投資信託)の保有残高は10月に20兆円を突破した。日銀とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が保有する株式は3月末時点の時価ベースで50兆円を超え、東証一部上場企業の3割以上で「公的マネー」が筆頭株主になっているのだ。
もともと何度も指摘してきたように、アベノミクスによる経済浮揚効果はほとんどゼロである。それどころか、国民の将来不安をかきたてる政策ばかりなので、国民のマインドは一段と萎縮し、個人消費が戦後初めて2年連続でマイナスになった。安倍首相は「アベノミクスによって雇用が生まれた」と胸を張り、失業率が下がったとか、有効求人倍率が上がったとか強調しきりだが、労働人口が年々減少して多くの産業で人手不足になっているのだから、そうなるのは当たり前である。