現在、先進国で暮らす人の寿命は1日に5時間ずつ伸びており、2045年には平均寿命が100歳に到達すると予測されている。しかも、医療技術の進歩で健康を保ったまま年齢を重ねることができる。
「人生100年時代」は政府のスローガンや保険会社のキャッチフレーズではなく、「生物学的な現実」になろうとしているのだ。
そうなればライフプランを根本から練り直す必要が出てくる。これからは子供を育て、家族を養うために働く「現役時代」と、子供が巣立って会社もリタイアした後の期間がほぼ同じになる。まだ若く健康で「老後」とはいえない第2の人生をどのように生き、何に喜びを見いだし、実り豊かなものにするか――それを見つけることが従来に増して大切になる。
最新の経済学では、「人が何に幸福度を感じるか」を研究する行動経済学が注目され、ノーベル賞受賞者を輩出している。
その1人、2015年にノーベル経済学賞を受賞したアンガス・ディートン氏ら米国プリンストン大学の研究チームは、「幸福はカネで買えるのか」という問題を研究した。その結果、収入が増えるに従って生活の満足度は上昇するが、上昇効果は米国の平均年収に近い7万5000ドルで頭打ちになるというデータを発表し、「低い収入には感情的な苦痛が伴うが、高収入で経済的に満足はできても、幸福は買えない」と結論できた。