日本では「年収500万円」が分岐点になる。大阪大学の調査によると、世帯所得と幸福度に関する調査では、世帯所得150万円までの幸福度は低く、それから所得が上がるに連れて幸福度は上昇していく。ところが、500万円を境に上昇曲線は頭打ちになり、ほぼ横ばいになってしまう。さらに、世帯所得が1500万円を超えると、逆に幸福度が下がるという結果だったのだ。
調査を行なった日本の行動経済学の第一人者、筒井義郎・大阪大学名誉教授(甲南大学特任教授)が解説する。
「貧しい人にとってお金が重要なのは確かですが、物質的な満足感は一定の生活水準に達してしまえば、それ以上大きくは上がらない。それなのに、もっと稼ごうと無理して働いて健康を損なったり、家庭を顧みなくなるなど、他が犠牲になれば収入は増えても幸福度が下がってしまうリスクがあります。その境界が1500万円だということです。
そうした人間の行動の癖を調べ、経済学を再構築しようというのが行動経済学です。そのなかでも、とくに、主観的な幸福感という心理的側面から経済の現象を分析する学問は『幸福の経済学』と呼んでいます」
※週刊ポスト2017年12月15日号