『情熱大陸』に出演し、「レトルトカレーをストローで吸う」姿が注目された筑波大学准教授で学長補佐も務める落合陽一氏。ネットではその奇妙に見えるシーンが数多く拡散されたが、落合氏の実像はAI(人工知能)やVR(バーチャル・リアリティ)、AR(拡張現実)といったテクノロジーを駆使した最先端の研究者だ。そんな落合氏が、著書『これからの世界をつくる仲間たちへ』の中で、若い世代に向けて「コンピュータとの向き合い方」「自分自身の高め方」を綴っている。「“意識だけ高い系”にはなるな」──どういうことなのか。
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「次の世界」に向けて、どんなことを学ぶべきかを考えるのは本当に難しいことです。ただ基本的には、「コンピュータには不得意で人間がやるべきことは何なのか」を模索することが大事だと言えます。
それはおそらく、「新奇性」や「オリジナリティ」を持つ仕事であるに違いありません。少なくとも、処理能力のスピードや正確さで勝負する分野では、人間はコンピュータに太刀打ちできない。ざっくり言うと、いまの世界で「ホワイトカラー」が担っているような仕事は、ほとんどコンピュータに持って行かれるのです。それは、よく人工知能が職を奪うという恐怖を掻き立てる表現とともに語られますが、ほんとうの問題は、どのようにして人の良いところと人工知能の良いところを組み合わせて次の社会に行くのかということだと思います。つまり迎合や和解のために、「人工知能」「コンピュータ」という“隣人”の性質について考えないといけません。コンピュータとの“文化交流”が必要なのです。
ところが若い世代に向けて書かれたビジネス書や自己啓発書の類を見ると、そういう世界の変化や、文化についての議論が前提になっていません。彼らにとってコンピュータは「道具」という認識にすぎないのです。