そういった本によくある話題、たとえば「人から聞いた話は30秒以内にノートに書こう」とか、「名刺交換をしたらこうやって効率よく整理しよう」とか、そんなことはコンピュータのほうがよほどうまくやってくれます。
たしかに、優秀なビジネスマンになるためには、処理能力の高さと根回し能力が必要でしょう。でも、ホワイトカラーのビジネスマンの社会的寿命がコンピュータの台頭によって尽きようとしているときに、そのためのスキルを磨いても仕方ありません。銃や大砲の時代が始まっているのに、兵士に剣術の奥義を叩き込み騎馬戦で戦場に出るようなものです。
それなのに、多くの啓発書は相変わらずホワイトカラー教育を志向しています。で、そういう自己啓発書やSNS上のオピニオンリーダーの言うことを真に受けた人たちが、いわゆる「意識(だけ)高い系」の大学生になったりする。これはかなりマズいことで、正直、いまの中学生や高校生には、とりあえず「“意識だけ高い系”にだけはなるな」と言いたいぐらいです。
本当に意識が高い、真の意識高い系になる分にはいいんですが、人間、楽をしたがる生き物なので、頑張ったアピールだけで終わってしまうケースが多い。
それはもったいないことです。なぜそうなるかと言えば、いま成功している資本家や上流階層たちは自分の人生を肯定したいがために、当然ルール作りを自分たちの流儀で行おうとします。その「自己流のビジネスルール」が書かれたのが、多くの自己啓発書です。