『情熱大陸』への出演でも注目を集めた、メディアアーティストにして筑波大学准教授で学長補佐も務める落合陽一氏(30)。AI(人工知能)やVR(バーチャル・リアリティ)、AR(拡張現実)といったテクノロジーを駆使した最先端の研究者である落合氏は、著書『これからの世界をつくる仲間たちへ』の中で、テクノロジーがますます進化する中での「働き方」について綴っている。キーワードは「経済感覚」「時間感覚」だという──。
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自分にとって何が幸福かを明確にしていれば、他人と自分を比較して落ち込むことはありません。別の言葉で言えば、それは「経済感覚」ひいては「時間感覚」をしっかりと持つということです。
経済と聞くとお金のことだと思うかもしれませんが、そうではありません。幸福感はお金だけで決まるものではないので、ここでいう「経済感覚」には、もっと広い意味合いがあります。とくにこれからの世界で考えなければいけないのは、「お金」と「時間」のどちらを大事にするかという問題でしょう。
なぜなら、今後の世界を支配するコンピュータにとって、「時間」はきわめて重要な概念だからです。
コンピュータが演算をする際、コストを決めるのは「仕事」÷「処理速度」=「かかる時間」の1点だけです。ある結果を出すのに、どれぐらいの処理時間を要するかが問われます。世界のコンピュータ化が進めば、人間もそれと同じこと。時間が貨幣と同じような価値を持つことになるでしょう。