大晦日に欠かせない「年越しそば」。日本の伝統行事を、今も大切に陰で支える働きマンの“1年でいちばん忙しい1日”に密着した。
東京都・麻布十番にある『総本家 更科堀井』は1789年、江戸時代に創業。大晦日には、変わらぬ老舗の味で1年を締めくくるべく、年越しそば目当ての行列が1日中後を絶たない。師走の寒空の下、「並んで食べるのも乙」と、この日を心待ちにしている常連客も多い。
1日に出るそばは、お土産用も合わせて、なんと4000食! 売り切れ御免は御法度で、楽しみに待つお客さんがいる限り、前日から職人たちは交代制で仮眠をとり、夜通しそばを打ち続けるという心意気だ。
入社3年目の若き職人・持田拓也さん(25才)は、1年目は大量のわさびをおろし続け、そばをひたすらゆでては盛った。2年目の大晦日、初めてそば打ちを認められた。
店長の関根透さんは、こう話す。「みんなが帰った後も、明かりがぽつんとついていて、のぞくと彼がひとりで黙々とそば打ちの練習をしている。職人にとって、年越しそばは華、大晦日は1年の集大成。だから料理長と相談して、やってみるかって。横から見ていれば、この1年、誰がどれだけ頑張っていたかはわかるもの」。
持田さんは「職人として常にプレーヤーでありたい。ぼくは不器用だから人一倍練習しないと。この大晦日も頑張りますよ!」と、笑顔を見せる。