とはいえ、ネット上などでは「生涯賃金2億円をもらえる女性が本当にいるのか」という疑問の声も目立っている。
「そもそも日本では、大卒サラリーマンの生涯賃金は3億~4億円といわれています。これまで私は、日本人の生涯賃金を3億円として人生設計を論じてきました。これは男性で大手企業に入社したケースですが、日本も雇用機会均等法で男女平等を定めている以上、大卒の女性でも同じ額を得られるはずです。今回は出版社の意向で『2億円』にしましたが、私としては、女性読者を対象にするとなぜ1億円少なくしなければならないのか、若干抵抗がありました。だからこそ、『女がそんなに稼げるわけがない』という批判が当の女性(専業主婦)から大量に出てきたことは、正直、かなりの衝撃です。
一握りの高所得者がいるから平均が高くなり、中央値とはかけ離れているとの批判も目立ちますが、資産は累積効果が働きますから、たしかに何百億円、何千億円もっている超富裕層が平均を引き上げて中央値とかい離します(統計学でいうベキ分布)。しかし収入は正規分布(ベルカーブ)に近く、何億円も稼ぐ女性がたくさんいるわけではありませんから、身長や体重と同じく平均値で見るのが適切です。ごくふつうの大学を出てふつうに働き続けた女性の生涯賃金が2億円というのは決して非現実的な数字ではありませんし、大手企業の幹部社員や専門職なら女性でも生涯賃金は3億、4億になるでしょう」
そうはいっても、2億円を稼ぐ女性など見たことも聞いたこともない、というコメントが多いのは、日本の会社では、総合職で入社した大卒女性が定年まで勤め上げるケースが少ない、という点が影響しているのかもしれない。
日本の会社は、残業などで“会社への忠誠”を示さなければ出世しにくい構造になっている。「子どもが生まれても働き続けたい」と考える女性がいても、男性や独身女性と同じように働くことが難しい以上、給料も減るし出世も望めなくなる。そうして仕事への不満や行き詰まり感から会社を辞めて“やむなく”専業主婦になる女性も少なくない。