家計を圧迫しがちなのが住宅ローン。30代以降に35年ローンを組んだ人の多くは65歳以降も返済が続く。大きな負債であるだけに、早めの返済を心がけたい。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏が解説する。
「たとえば東京郊外のマンションを4000万円で購入し、35年ローンを組んでいた場合、公的年金が夫婦で毎月22万円程度であれば、収入の6~7割が住宅ローンに消えて生活を圧迫することになります。老後の資金計画で最も大事なのはいかに住宅ローンを残さないかです」
つまり、“繰り上げ返済”が必要ということだ。
「とりわけ分譲マンションの場合、管理費や共益費はもちろん、修繕積立金や駐車場代なども毎月支払わなくてはならない。老朽化に伴い、事前の計画より修繕費が嵩んで住民負担が増すケースも非常に多い。さらに、古くなった給湯器やエアコンの買い替えなど“見えない出費”が突然やってきます。だからこそ、住宅ローンのような“見える費用”はなるべく早く返済しておくべきです」(深野氏)
ただし、退職金をすべて注ぎ込んでまで完済するのはご法度だという。
「低金利の住宅ローンを無理に完済して一時的に手元資金不足になり、生活費のために高金利の無担保ローンに手を出すようでは本末転倒。退職金は無理のない範囲で繰り上げ返済にあてるべきです。たとえば住宅ローンが1000万円残っていて退職金2000万円の場合、まず500万円を繰り上げ返済して、その後は毎回の返済額を変えないというくらいの水準が適切と考えます」(深野氏)