日本人の平均寿命はどんどん延びていて、男性は79.59歳、女性は86.36歳(2015年)となっている。さらに50歳まで生きた人のその後の平均余命は男性が31.39歳、女性が37.32歳となり、日本はすでに「超高齢社会」に突入している。「老後」が長くなる一方、その生活を支えるはずの年金制度は制度疲労を起こしており、不安は募る一方だ。そんな老後の経済的な不安を解消する方法について、新刊『専業主婦は2億円損をする』が話題の作家・橘玲氏に聞いた。
橘:「老後」を経済学的に定義するなら、働いてお金を稼ぐちからである「人的資本」をすべて失った状態、となります。だとすれば、定年で会社を辞めたからといって仕事までやめるのではなく、たとえば80歳まで働き続ければ、その分、老後は短くなる。「老後問題」というのは老後が長すぎることなのですから、生涯現役によって老後を短くすれば問題そのものがなくなります。
──「人生100年時代」では、60歳で仕事をやめれば老後は40年間だし、80歳まで働き続ければ老後は20年間に短縮できる、と橘氏はいう。さらに、結婚している世帯なら、夫婦の働き方によっても大きな差が出てくる。
橘:専業主婦世帯と共働き世帯では人生設計が大きく違ってきます。夫が20代前半から40年会社に勤めて、老後を夫の年金だけで暮らす専業主婦モデルを1馬力としましょう。それに対して夫婦が共働きなら、2馬力にはならないとしても1.5馬力くらいにはなるはずです。この世帯収入の差は複利で拡大していきますから、30年、40年たつうちに大きな資産格差が生じます。たとえ1.2馬力にしかならないとしても、この複利の効果は同じです。
さらに、夫婦ともに専門的な仕事に就いていて、60歳以降も2人で年500万円の収入があるとしましょう。80歳まで働けば20年間で1億円です。仮に2人で年200万円しか稼げなくても、20年で4000万円です。
夫1人が40年働いて積み立てたお金で、夫婦2人で60歳から100歳までの計80年間(40年×2)を暮らしていく家庭と、「生涯共働き」の家庭では、80歳時点でとてつもない差がつきます。専業主婦の方は「女が働いたってたいして稼げない」といいますが、複利の効果と、長く働くことの効果を計算に入れてないんですね。