いま日本では、国も地方自治体も、待機児童を減少させ、子育て世帯への支援を拡充しようという動きが進んでいる。しかし、何年経っても待機児童問題は解消しないのが現実だ。シンガポールに住むファイナンシャル・プランナーの花輪陽子氏は、「日本の保育園には、自由な競争が必要」と指摘する。
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3年前のこの時期、住んでいた東京・世田谷区から「保育園不承諾通知」が届きました。当時、認可外に関しては20園近くの園へ直接申し込みをし、区に提出をした用紙には10園以上の名前を記載し、保育園が必要な理由を記入したのですが、残念な結果に終わってしまったのです。
そんな中、夫の仕事の関係でシンガポールに行くことが決まりました。そして、日本と比べると圧倒的に恵まれた保育事情に驚かされることになりました。シンガポールは共働きの比率が4分の3程度なのですが、「保育園に入れなかった」という声は聞いたことがなく、保育園と外国人ヘルパーに支えられて女性の就労を促しています。人気園を希望していて待機している人はいますが、選ばなければすぐに保育園に子供を入れることができます。
なぜこんなに保育園に入りやすいかというと、保育料が高いということ(施設が運営できるだけの費用を保護者が払っている)と自由な競争が働いているからです。ローカルの保育園の場合は月5万~20万円程度と園によって料金の幅があります。「こんなに高いと、保育園に行かせられない」と思うかもしれませんが、シンガポールの女性はフルタイムで働くことが多いので保育料を超えた働き方をしています。税の配偶者控除はありますが(配偶者の年収が約32万円以下だと約16万円の控除)、日本のような社会保険の扶養はないので扶養内で働こうというインセンティブは働きにくく、女性もしっかり働いています。
また、シンガポール国民には政府からの補助もあり、子供の年齢や世帯収入にもよりますが、2万4000円から4万8000円程度の補助が受けられる場合もあります。補助は直接、保育園に払われ、保育料と補助の差額を各家庭が負担する形になります。働いていなくても補助を受けることができますが、働いているほうがより多くの補助を受けることができる仕組みになっています。
日本人の友人が、家の近くのごく一般的なローカルの保育園(保育料は月10万円程度)に子供を通わせているのですが、英語と中国語によるバイリンガル教育は当然、そろばんなどの算数的な要素も教えてくれて、発表会もバレエの発表会並みに本格的にやってくれるとのことです。加えて、月数千円を追加すれば保育園で習い事もできるようです。通常、朝7時から19時まで預かってくれて、土曜日も預けられる園もあります。補食も含めると3~4食を提供し、シャワーも入れてくれるので働くママも大助かりだそうです。高い施設の場合は月20万円程度かかりますが、施設も高級感があり、ランチはイタリアンなど──という高級志向です。