米国発の世界同時株安で日本株も激しい乱高下に見舞われており、今後の日本株の見通しに懐疑的な声も少なくない。そうしたなか、グローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏は「日欧の中央銀行は量的金融緩和を続けており、2008年のような金融危機とはほど遠い状況で、長期的に株価が上昇基調にあるのは変わりない」と分析する。その背景として、「政策によって株価を押し上げる3つの条件が揃いつつある」という。それは何か。戸松氏が解説する。
* * *
株価が過去最高値を大きく更新するイメージは、1980年代のレーガン政権時にわずか1000ドルほどだったニューヨークダウが長い時間をかけて2万6000ドルまで上がり続けてきたことを見るとわかりやすいかもしれない。そして、米国にはそれを成し遂げた条件が3つあり、日本は現在それらを満たしつつある。
順番に見ていこう。
【1】株主価値の向上
株価上昇に直結するROE(株主資本利益率)の上昇、そして長期的な投資成果に欠かせない配当と自社株買いは株主価値を向上させ、結果的に株価上昇につながる。
米国企業では、アップルやアルファベット(グーグルの持株会社)、フェイスブックをはじめROEは最低でも20%超、30~40%台も珍しくない。またS&P500(米国主要500社で構成される株価指数)は1960年から今日まで年率平均6.7%で上昇してきたが、500社平均の純利益額も同期間で年率平均6.6%増、500社合計の配当額も5.7%増となっている。現在の米国株はバブルだと指摘する向きもあるが、実は企業利益と配当の増加とほぼ等しい上昇を見せているのだ。
これに対し、日本企業のROEは長年にわたり平均5~8%程度だったが、安倍政権誕生後にROEを高める意識が企業にも広がり、最新の日本株ランキングでトップ500社の平均は10%の壁を初めて超えてきた。配当や自社株買いを拡大する企業も増えており、株主価値の向上が着実に進んでいる。