親の介護を始める状況になった場合、得するタイミングがある。労働者が家族の介護のために休業(介護休業)すると、無給期間を減らすため雇用保険から「介護休業給付」が支給される。
この制度を用いると、要介護状態になった家族1人に対し、通算して最大93日間の介護休業を取得でき、仕事を休んでいる間は賃金の67%が支払われる。正社員や契約・嘱託、パートなどにかかわらず、週に3日以上、4時間以上働いていると給付の対象となる。
親の介護が必要となるのは子供の年齢が50~60代が大半だが、定年を間際にして親の介護が必要になった場合、他の家族の協力があり、「少し待てる余裕があるのであれば、定年後に介護休業するほうが得になる」と指摘するのは、社会保険労務士の油原信氏だ。
「定年後に再雇用される場合、一般的に給料は現役時代の6~7割程度にダウンします。介護休業給付は雇用形態を問わずに支払われるため、定年まで休業せず給料をもらい、再雇用後に介護を始めたほうが得になります」
具体的に試算しよう。厚労省の賃金構造基本統計調査(2016年)によれば55~59歳の平均賃金は41万1800円。59歳の正社員の時に1か月介護で休んだとすると、介護休業給付は27万5906円。
一方で再雇用後に給料が現役時の75%まで下がってから介護を始めると、20万6929円となる。
別掲の図のように、同じ給料の67%減を給付金として受け取るにしても、その“割引額”は、定年後再雇用のほうが小さくなる。