では、実際に自宅をたたむとどれくらいの利益があるのか。65歳の同い年夫婦が都内にある一軒家を3000万円で売却し、その後は家賃9万円のマンションで暮らすケースを考えてみる。
妻が平均寿命の87歳まで生きるとして、マンションにかかる家賃は2376万円(9万円×12か月×22年)。これに入居時の敷金礼金各2か月、2年に一度の更新料を合わせた135万円を足すと2511万円になる。ファイナンシャル・プランナーの横川由理氏が解説する。
「自宅売却益から妻が亡くなるまでの22年分のマンション経費を引くと単純計算で489万円の利益となる。65歳で自宅を売却して住み替えれば、約500万円を生活費に回せる計算です」
一方で、「老後資金は不安だが、愛着のある家から離れたくない」という人もいるだろう。マイホームに住み続けたまま老後の生活資金が得られる「リバースモーゲージ」や「リースバック」という手段がある。
前者は自宅を担保に金融機関から融資を受け、毎月利息を返済。死亡後に自宅を売却して融資残高を一括返済する。後者はマイホームを売って売却金を手にするが、そのまま賃料を払って“元持ち家”に住み続けられるというサービスだ。
「リバースモーゲージは利息を払い続けるというコストがかかり、リースバックはリース料(家賃)が、相場よりも割高になるケースがある。この制度を利用するならマイホームを手放す日を遅くしたほうがリスクヘッジになります。70歳以降がベターでしょう」(横川氏)
自分の老後資金計画に応じて、売り時は変化する。
※週刊ポスト2018年2月16・23日号