「お客様は神様です!」とでも思っているのか、時にマナーの悪い客が飲食店には存在する。だが、マナーを悪くしていてもメリットはない。ほぼ毎日飲食店で酒を飲んでいるネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、これまでに酒場で出会ったマナーの悪い客と、マナーを良くする利点を解説する。
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この前なかなかストロング的にマナーの悪い客が居酒屋にいました。18時20分頃、店に入ってきた瞬間、彼はドアの近くの4人掛けの席に1人で座り電話をかけ始めました。私は彼のテーブルの一つ奥のテーブルで飲んでいました。この店は人気店のため、19時台になると全席が埋まり、1人客は基本的には奥のカウンターに座るのが慣例となっています。
店員は注文をどのタイミングで取ろうかと迷っているようでしたが、電話をかけ始めてから数分、ようやく彼の元へ向かい注文を取ろうとすると「あっちへ行け」とばかりに犬を追い払うかの手の動きをしました。私はその時、連載コラムの内容をどうするかの打ち合わせをしていたのですが、その男性の電話の声がうるさ過ぎて時々打ち合わせ相手の言っていることが聞こえない。
私は男性に背を向けていたのでその表情は見えなかったのですが、私の相手は彼の顔をチラチラと見ては「もう少し静かにしてくれ……」という訴えをしたのですが、まったくその大声は変わらない。店の奥にいる客も男性のことをチラチラと見るのですが、やはり意に介さず大声で喋り続ける。すると店員が向かいました。おっ、ついに注意をするのか? と思ったら、あくまでも酒を注文を取るよう呼ばれただけのようです。男性はメニューの中から何かを指さし、一応は注文は完了。