これまで申告書を一度も出していないために高い税金を取られ続けている受給者たちは、自分がどれだけ余分な税金を払わされているかという現実を知り、確定申告でいっぺんに税金を取り戻すチャンスと捉えた方がいい。
専門学校生の娘がいるAさん(67)もその1人。公的年金280万円と企業年金120万円を合わせた年収は400万円。持ち家もあり、悠々自適の年金生活ながら、これまで約22万円の所得税と約20万円の住民税を取られてきた。
そこで税理士の協力でAさんの確定申告書を作成すると、〈医療費42万円、社会保険料38万円、地震保険料1万円〉など各種の控除を差し引いた税額は所得税が10分の1の約2万円、住民税が約5万円となり、35万円も税金が安くなる計算になった。
「税金を8倍も高く取られていたなんて」──数字を見たAさんは絶句した。早速、税務相談会に出向くことになった。確定申告は過去5年間さかのぼって還付を受けることができる。Aさんは年金受給開始からの3年分、ざっと100万円近い税金還付が可能になる。
扶養親族等申告書を提出していない年金受給者の中にはこんなケースはざらにあるはずだ。
確定申告で認められる控除には、医療費や社会保険料以外にも、自宅の「雨漏り」改修費や「シロアリ駆除」、「雪下ろし」の費用なども計上できる(雑損控除)。自宅のバリアフリー化などのリフォームや改装工事の領収証があれば、悩まずに申告会場で相談員(税理士)にどの控除にあてはまるか相談すればいい。