「住民税非課税世帯は国民健康保険などの保険料が7割近く減額されています。それが課税世帯になると、年金の受給額は同じでも保険料は一気にハネ上がる。他にも、バスの無料パスや予防接種が無料になるなど自治体ごとに設けられている優遇措置が受けられなくなり、生活費の負担が大きく違ってきます」
わかりやすいケースがある。政府は消費税率を5%から8%に引き上げた2014年度以降、低所得者の負担を減らすという名目で「住民税非課税世帯」を対象に給付金を配ってきた(2014年度は1人につき1万5000円)。だが、非課税世帯の基準が変わったことで、本来ならもらえていたはずの1400万人が事前に給付対象外にされていたのである。
その後も本格的な年金カット、保険料アップという年金改悪に突き進み、介護保険料の値上げ、後期高齢者医療制度と高齢者は狙い撃ちされてきた。
「天引き」すれば気づかない
図解は年金制度に詳しい「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏によるシミュレーションと本誌が税務当局に取材した内容を基に作成した、見えない年金増税のカラクリである。
20年前の年金270万円の高齢世帯の税額は所得税、住民税ともにゼロ。年金から支払うのは国民健康保険料の約5万円だけでよかったが、現在は税金(所得税・住民税)約8万円に加えて、国民健康保険と介護保険の保険料が合計29万円も天引きされている。北村氏が語る。