2月半ば、都内に住む30代の主婦・A子さんのポストに一通の封書が届いていた。封を切ると、中には、「受信料支払いのお願い」とともに支払い用の振込用紙が同封されている。A子さんはひとり暮らしを始めてからこれまで一度も受信料を支払ったことがない。これまで何度か、受信契約を求めるスタッフが家を訪れたことはあったが、“無視”してきた。振込用紙まで入った封書が届いたのは初めて。なぜ? もしかして──? A子さんはあるニュースを思い出す。
最高裁が約20万円の支払いを命じる
昨年12月、ある裁判の判決が大きく報道された。受信料の支払いを拒否している男性とNHKが争った裁判で、最高裁は受信料制度を「合憲」と判断、男性に未払い分約20万円の支払いを命じたのだ。
続く今年2月9日には、客室にテレビがあるのに受信契約を拒否しているホテル事業者に対し、最高裁は支払いを命じるなど、今、NHK受信料の支払制度について注目が高まっている。
一連の裁判は受信料についての問題提起をしただけでなく、受信契約に追い風を吹かせ、契約数は急増。現在、受信料未払いは全国に900万世帯を超えるが、昨年12月に視聴者が自発的に申し込みをした件数は、前月までと比較すると約5倍となった。
冒頭のA子さんは、今回の報道でふと疑問がわいた。
「でも、支払わなくても罰せられるわけじゃないし…。そもそも支払いって義務?」
たしかに“NHKは見ていない”などの理由で支払いを拒否したり、受信料収納スタッフの訪問をスルーする人も多い。『NHK独り勝ちの功罪』(ベスト新書)著者で、ジャーナリストの小田桐誠さんが話す。
「1950年に制定された『放送法』で、ラジオやテレビ放送を受信できる機器があれば、受信契約を結ばなくてはいけない旨が規定されています。裁判ではこうした放送法の規定が、憲法に違反しているか否かが争われ、合憲と判断されました」(以下、「」内同)