定年を前に「今の会社で再雇用」か、「別の会社に再就職」か選択を迫られる人は少なくない。一般的には再雇用が年金や福利厚生などの点で有利なケースが多い。しかし再就職希望者は「やっぱり転職は不利か」と判断するのはまだ早い。
「雇用延長で会社に残ってはみたものの、すでに自分の居場所はなくなっていた」という人は結構多い。定年後は給料が大きく下がるのに、途中で居づらくなって退職するくらいなら、定年時に無理して会社に残る必要はない――そう決断するなら、「退職」で得られる権利を最大限追求すればいい。“年金博士”こと社会保険労務士の北村庄吾氏が語る。
「そういう人は焦って次の仕事を決めるのではなく、失業保険(雇用保険の失業給付)を受けながら再就職のために職業スキルを磨くという選択を考えるべきでしょう。定年退職の場合、失業給付は最大150日(5か月)まで出ますが、雇用延長して65歳を過ぎると最大50日しか受給できません。これを64歳までに全額もらっておくのが重要です」
失業給付が延長される仕組み
失業保険の支給額にも差がつく。失業給付は直近6か月の月給で決まるため、雇用延長組の方が不利になる。同期入社の2人、AさんとBさんは定年時に会社から雇用延長の条件として、月給50万円から20万円への6割ダウンを提示された。
それを断わってAさんは定年退職し、失業保険を申請した。支給額は高い給料で計算され、月額18万7000円を5か月、総額約100万円の失業給付を受けた。一方のBさんは会社に残り、65歳で退職してから失業保険を申請した。ところが、失業給付は再雇用後の低い給与で計算されて月額13万5000円とされ、50日分の総額は約24万円だった。