田代尚機のチャイナ・リサーチ

米国による鉄鋼・アルミ輸入課税、中国への影響は軽微か

米国による鉄鋼・アルミ輸入課税の影響は(写真:アフロ)

 以下に紹介するのは、中国全人代(日本でいう国会)初日となる3月5日に行われた李克強首相による政府活動報告の中の一部である。「アメリカ第一主義」とは対極をなす内容である。

「貿易、投資の自由化、簡便化を進める。中国は経済のグローバル化をしっかりと推し進め、自由貿易を維持し、多国間との貿易協定の話し合いを推し進めたい、地域間の全面的経済パートナーシップ協定協議を早く締結したい、アジア太平洋自由貿易区、東アジア経済共同体の建設を加速したいと考えている。中国は貿易紛争について平等に、対話や協議を通し解決したいと主張しており、貿易保護主義に反対、自身の合法的な権益を断固として防衛する」

 アメリカ商務省は2月16日、アメリカ通商拡大法232条に基づく報告書を発表した。中国を中心に複数の国・地域からの鉄鋼、アルミ製品の輸入増加が「国家安全保障上の脅威になる」として、トランプ大統領に輸入制限の発動を勧告。鉄鋼、アルミニウムについて、すべての国を対象に関税をかけることを要請した。

 これを受けて、トランプ大統領は3月1日、鉄鋼には25%、アルミには10%の関税をかける方針を表明している。トランプ大統領は今年の秋に行われる中間選挙に向けてアメリカ第一主義、貿易保護主義を強めるのではないかとみる向きが多い。貿易戦争が勃発、世界経済は混乱に陥るのではないかといった悲観的な見方もあるようだ。

 中国本土の報道を見る限り、少なくとも株式関係者が頻繁に読む情報媒体上では関連記事は目立たない。本土株式市場では、3月2日、5日の鉄鋼セクター、アルミセクターは売られているが、全体相場を見る限り、上海総合指数は順に0.59%下落、0.07%上昇と大きな変化はない。

 共産党が現在、最も力を入れて行っているのは供給側改革である。その対象となるセクターは、鉄鋼、石炭、非鉄金属である。鉄鋼、アルミ産業に対しては、遅れた設備の淘汰を進め、供給力を削減しようとしている。輸出に関しては、一帯一路戦略が最重視されている。これは海のシルクロード、陸のシルクロードの開発を各国と共に協力して行うといった大戦略であり、これによる鉄鋼需要、アルミ需要の拡大を期待している。中国は、アメリカに鉄鋼も、アルミニウムも大量に売りたいなどとは考えていない。

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