〈100Yen-Shop〉──こんな単語が外国人向けの観光ガイドに登場するほど浸透した100円ショップ。「ダイソー」「セリア」「キャンドゥ」の大手3社を合計した市場規模は6800億円で、今や日本の一大産業となっている。しかしその原点は、愛知県の郊外の小さな店だった。
今から33年前、愛知県春日井市在住の松林明さん(63才)は、脱サラして雑貨の移動販売をしていた。
「当時、100円均一の雑貨をトラックに載せて移動しながら販売する人がいたんです。それを見て、“あれ、結構売れるみたいだな”と思い自分もやってみようと、スポンジやたわしなどを仕入れ、100円で移動販売していました」(松林さん)
ある時、倉庫で雑貨を整理していると、近所の人たちがやって来て、「今、商品を売ってほしい」と言われた。その声は松林さんにとって「天啓」だった。
「お客さんにせがまれた時、“あれ、これなら移動せず、倉庫を店に改装してここで売ってもいいんじゃないか”と思ったんです。周囲からは、『移動販売だからこそ、人が集まる』と反対されたけど、押し切って店を出しました」(松林さん)
1985年3月、日本初の店舗型100円ショップとなる「100円ショップLIFE」が産声を上げた。
しかし、最初の数か月は売れない日々が続いた。
「これまでは段ボールからただ出して置いただけだった商品を、きれいに並べるなど、工夫を重ねました。それを続けて行けば必ず軌道に乗ると思っていたし、妻も“来てくれたお客さんがあんなに喜んでいるのだから大丈夫”と協力的だったから不安はなかった」(松林さん)