「ねえ、新居どこ? まさか赤坂とか麻布とか?!」
そんな質問に「まあそのあたり」と言うと、京子が真剣な顔で言いました。
「本当にその辺に住んでるなら、駅の近くに何があるか言ってみてよ」
まるで私の結婚が嘘だと言わんばかりです。
お嬢様系の女子高だから、ずっと「彼氏」でマウンティングしあってきた彼女たち。かつては彼氏の高校名で競い、そして彼氏の大学名で争い、同じ慶應彼氏でも「幼稚舎組か大学デビューか」で優劣をつけてきた彼女たち。だから「夫」も気になるのはわかるといえばわかるのですが……。
しかし、その日、私は決めました。彼女たちは絶対に結婚式には呼ばない。夫を特定できる情報は教えない。これで会うのは最後かもしれない──。そして私は「麻布妻」になったのです。
私も「どうせあなたもブランド志向で旦那をつかまえたんだろう」と突っ込まれたら何と答えたらよいかわかりませんが、少なくとも彼女たちのように好奇心をむき出しにしたり、無意味な自慢をしたりする根性は持ち合わせていません。だからマウンティング女性のターゲットにされてしまうのかもしれませんが。