今年2月に発覚した“消された年金”問題の発端は、毎年8月末~9月上旬にかけて日本年金機構から年金受給者に送られてくる「扶養親族等申告書」だった。この申告書に配偶者など扶養親族の所得情報を書き込んで返送すると、年金から源泉徴収される所得税の控除が受けられる。
この書式が大幅に変更されたため、3月初旬時点では、“申告書の書き方を間違える受給者がたくさんいたので、2月分の年金で130万人に過少支給が発生した”という話になっていた。
ところが3月20日になって、日本年金機構は、申告書のデータ入力を委託した情報処理会社「SAY企画」が入力ミスを重ねたため、申告書を適切に提出したにもかかわらず、その内容が正しく2月の支給額に反映されなかった人がいると明らかにしたのだ。年金を減らされていたのは約10万4000人、その総額は約20億円に及ぶ。
この問題の本質を理解するには、「扶養親族等申告書」に仕組まれた“税金ぼったくりの罠”を理解することが必要になる。
申告書を提出して機構側が扶養親族のデータをきちんと入力した場合と、そうではない場合を試算して比較してみよう(65歳の夫婦で、夫の年金220万円、妻の年金が80万円のケース)。
源泉徴収額にはなぜか20倍もの差が生まれている。申告書は扶養親族の所得情報を機構に申告し、控除を受けるためのもの。扶養親族が妻1人であるケースで試算すると、申告書提出の有無による違いは、「配偶者控除38万円を受けられるかどうか」だけのはずだ。