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「消された年金」の発端は複雑な書式変更 間違い誘発の悪意さえ感じる

 ところが、実際には申告書を提出しないと他の控除まで削られる仕組みになっているのだ。「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が解説する。

「65歳以上の受給者の場合、本来は『基礎控除(38万円)』と『公的年金等控除(120万円)』があるので、年158万円までは課税対象になりません。さらに扶養親族がいれば、それに伴って控除が増えます。

 ただし、申告書を提出していないと、配偶者控除など、扶養親族がいることで受けられる控除がなくなるだけでなく、『基礎控除』や『公的年金等控除』まで縮小される制度になっています」

 このケースでは、申告書を提出した場合に受けられる38万円の基礎控除は提出しないとゼロになり、120万円あった公的年金等控除は52万7500円まで圧縮されてしまう。

 さらに、申告書を提出していない場合、約5%のはずの所得税率が、2倍に跳ね上がるのだ。

単身者も大幅カット

 この不条理な“ペナルティ処置”は、「申告書を提出したのに記入漏れや機構側のミスでデータが適切に入力されていない人にも、同様に適用される」(同前)のだ。

 今年2月の支給額を見て、“こんなに少ないはずはない”という問い合わせが機構に寄せられたが、それは申告書の提出の有無が「年金大幅カット」につながることを端的に示している。

「申告書に『扶養親族』とあるので“扶養する家族がいないから関係ない”と勘違いする人もいますが、たとえ単身者でも申告書を提出しないと控除が大幅に減らされてしまうのです」(同前)

 それほどまでに重要な記入方式の大幅変更を、機構は適切に周知していたとはいえない。申告書の様式が変わることについての案内や説明は数回ホームページに掲載しただけである。

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