3月に就職活動が解禁されてから、はやひと月。全国各地の企業説明会には、着慣れぬリクルートスーツ姿に身を包んだ学生たちが押し寄せ、人事や先輩社員の言葉に一生懸命耳を傾けている。2019年卒の就職人気企業ランキングを見ると、かつて人気だった銀行・テレビは軒並みダウン、航空、食品は上位をキープしている。
一方で、人気企業ランキングに踊らされすぎてはいけないと指摘する声もある。就職問題に詳しいジャーナリストの石渡嶺司氏の話。
「学生人気と安定性はまったく別のものです。人気企業ランキングトップ10は短期間で入れ替わる。結局、ランキングは時代のムードや企業のブランド戦略によるところが大きいのです。
例えば2000年代前半はシャープが大人気でした。『世界の亀山ブランド』として液晶テレビのCMが大量に流れていたし、特に関西の学生の志望者が多かった。しかし、液晶テレビの競争過多で経営が悪化し、結果は2016年の大リストラ。不祥事が相次いだ東芝も同様です。人気というのは良くも悪くも時代に影響して動くものなので、そこを目安に企業を選ぶのはおすすめできません」
実際、新聞広告で今回のランキングを見たCさん(48才 パート主婦)は、夫(50才)の現状に思いを馳せた1人。
バブルが弾けて、堅実なメーカーが人気を集めた1990年代半ば、夫は当時人気企業ランキングの常連だったソニーに入社した。
「世界で闘う日本最大手家電メーカー社員の妻として鼻高々の日々でした。テレビもパソコンも全部自社製品。われながら愛社精神に溢れる家庭だったと思います。でも、夫は家電部門の大赤字による2012年の大規模人員整理でリストラされてしまった。なんとかコネで別会社に転職しましたが、給料は3割減です。どんな人気企業も一寸先は闇。人気ランキングは“今だけの尺度”だということを、学生には伝えたいです」