国連の推計では、現在68歳の日本人が100歳を迎える2050年には、100歳以上の人口が100万人を超えると予測されている。人生100年時代の戦略をどう組み直すか。その羅針盤として昨年来ベストセラーとなった本がある。
〈高齢者医療や年金といった人生の締めくくりの時期に関わる問題だけを見るべきではない。(中略)全体像を見失う。長寿化により、老いて衰えて生きる年数が長くなるわけではない。長く生きられるようになった年月の大半を、私たちは健康に生きることになる。若々しく生きる年数が長くなるのである〉
そう指摘する英国ロンドン・ビジネススクールの経済学者2人の共著『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』だ。日本語版は2016年10月に刊行され、30万部のベストセラーとなっている。
これまで日本社会では、生まれてから約20年間は教育期間、60歳定年まで約40年の職業生活はモーレツに働き、リタイア後20年くらいの余生で余暇を楽しむという3つのステージに分けてライフプランを考えるのが常識だった。しかし、同書は、過去のモデルは役に立たないとし、60歳以降の長寿化時代をカネのかかる「厄災」と考えるのではなく、人生の「恩恵」と捉える方法論を提示している。
職業生活のステージでいえば、就職・引退の常識が変わる。定年後の再雇用では、現役時代のモーレツ社員ではない働き方で達成感を得ることができる。