高収入世帯が数多く暮らす港区麻布界隈。当然ながら「医師夫人」もたくさんいる。彼女たちは「夫の病院名」でマウンティングし合っているという。夫は外資系金融勤務で年収数千万円、1歳の子供を持つアラサー美人主婦ライターで「麻布妻」の1人である高木希美氏が富裕層女性たちの実態をリポートする。
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近所に住む智花さん(仮名、以下同じ)は、ご主人が国立大学医学部出のお医者さまで、ご主人の家系もだいたいお医者さま。実家は6LDKの大豪邸。夏は毎年、家の屋上でバーベキューをしているそうです。
いつもFOXEYのワンピースやReneを着ていて、ラブリーです。娘さんも毎シーズン新作のBonpointを着ています。ちなみに、Bonpoint(ボンポワン)は、フランスの老舗高級子供服ブランド。ワンピースは1着3万円はします。
親子で「ザ・有名私立ママ」といった出で立ちです。
「クレヨンしんちゃんは絶対見せないの」
「キャラクターモノはダメ。ファミリアのファミちゃんしか禁止なの」
「テレビでアニメ見せると口調がうつるから困っていてテレビ禁止にしたんです」
ファミリアも子供服のブランドで、ファミちゃんはクマのキャラクターです。普段は子育ての持論を世間話程度に話すだけで、あまりマウンティングしてくる印象もなかったのですが、ある日、智花さんの目の色が変わった出来事がありました。
ある親子教室の日。やはり麻布に住む、ルリさんとそのご主人もいらっしゃっていました。ルリさんのお家も娘さんもBonpointのお洋服を着せられている時が多くて、髪は三つ編みにリボンのピン。革靴を履かされて、品が良い感じです。
「今日もBonpointおそろいね~。ご夫婦で習い事にいらっしゃるなんていいわね。お休みなんですか? うちの主人にも休みがあれば来てもらえるんですが……」
智花さんはルリさんご夫婦に絡みました。
「えぇ、今日は病院がお休みでして、珍しく休みなのでたまには一緒に来てみようかと」
ルリさんのご主人が穏やかに答えました。すると智花さん、いきなり口調が変わりました。
「え? 病院? お医者さんですか? だからか、なんか雰囲気似てる気がしてた」
「あ、はい?」
「ドクター? 何科ですか? 病院名は?」
「びょ、病院名ですか?」
突然早口になった智花さんに、ルリさんのご主人も驚き気味です。