「人数で幅を利かせ、高度経済成長に乗っておいしい思いをした挙げ句、バブル崩壊後の負の遺産を下の世代に押しつけている」──「逃げ切り世代」として羨ましがられ、終いには批判の的になる団塊の世代。しかし、実態は全く逆だった。
政府は「打ち出の小槌」として、人口ボリュームの大きい団塊世代から年金保険料を搾り取る一方、受給面では何度も「狙い撃ち」にしてきたのだ。
2004年には「マクロ経済スライド」が導入され、現役人口の減少や平均余命の伸びなどに合わせて、年金給付水準が自動的に調整されるようになった。
制度上、「物価上昇、賃金減少」という局面で年金はプラスマイナスゼロに据え置かれていたが、2021年度から始まる新ルールでは、物価と賃金のどちらかがマイナスになれば、年金額が引き下げられるうえ、物価と賃金がどちらもマイナスの場合はマイナス幅が大きい方に合わせて年金を減らされるようになる。“年金博士”こと社会保険労務士の北村庄吾氏は言う。
「さらにデフレで減額できなかった分は翌年以降に持ち越し、物価上昇時にまとめて差し引く『キャリーオーバー制度』も2018年から導入されました。いずれもあらゆる理屈をつけて、すでに受給が始まっている団塊世代への年金給付を抑制しようという試みです」
そもそもこれまでの年金制度を支えてきたのは、団塊世代のおかげだ。
「政府は長年、サラリーマンから支給額より多くの保険料を徴収して、余った金を年金の積立金にしてきました。実際、団塊世代が就職した1965年に約1兆4400億円だった積立金は、大量退職を迎えた2007年に約127兆円まで膨れ上がっています。現在の年金制度が破綻寸前なのに年金を支払えるのは、この積立金があるからです」(北村氏)