イソップの寓話『ずるい狐』は、2匹のネコが獲物の取り合いをしていると「公平に分けてやる」ともちかけてわざと不公平に分配する。一方のネコが「向こうが大きい」と苦情を言うと、反対の獲物を少し食べ、もう一方のネコが「今度はあっちが大きくなった」と言えば逆を食べる。そうしてついに狐は獲物を全部平らげてしまう。
政府のやり方もそうだ。政策の行き詰まりと失政を繕うために世代間の格差をつくり出したうえで、「不公平を是正する」という名目で得する世代の負担を増やす。年金、医療保険改革から税制改正まで、過去、政治家が「是正」と言って恵まれていない世代の給付を引き上げて得する世代に合わせたことはない。
国民がイソップのネコのように「あっちの世代が恵まれている」と不満を言えば、これ幸いと負担増の口実にされ、国民は身ぐるみ剥がれてしまう。
そうした政治のツケが世代間の小さな不公平をつくり出し、それが累積すると大きな「老後格差」になる。
政府は「高齢者の健康寿命が延びている」と働き方改革で「希望すれば何歳までも働くことができる社会」を掲げ、団塊世代の次に人口が多い団塊ジュニアの高齢化に合わせて年金支給開始年齢を65歳から70歳、さらには75歳へと引き上げることを企んでいる。
「年金財政から計算すると、あなた方の世代から、70歳支給にせざるを得ません」
年金減額や高齢者医療費の引き上げを働き盛りの50代の頃までに言われれば、生活を切り詰め、老後に備えて貯蓄を増やすなどまだ対応の仕方がある。