大学進学率が50%前後に達し、「大卒」という肩書きだけでは食べていくのが難しくなった今、改めて注目されているのが専門学校だ。目的もなく大学に通うぐらいなら、専門学校で専門的な知識や技術を身に付けたほうがよほど将来のためではあるだろうが、中にはとんでもない生徒もいるようだ。
都内在住のK氏は、フリーランスの音楽プロデューサーとして活動するかたわら、現在、某音楽系専門学校で音楽理論、音響、録音、編集などを教えている。業界の大物から直々に「講師をしてくれないか」と頼まれ、渋々この仕事を受けたというK氏。生徒に関する予備知識がまったくないまま初回の授業に行き、大きなショックを受けたそうだ。
「初回はとりあえず『今後、どういうことを教えていくか』ということを説明し、ビートルズ、マイケル・ジャクソン、坂本龍一などを例に挙げて、彼らがいかに革新的であったか、レコーディングにどんな技術が使われているのかといったことを話しました。
しかしとにかく反応が薄いので、一人の生徒にどんな音楽が好きなのか尋ねると、私が聞いたことのないアーティストの名前が返ってきたのです。誰なのか尋ねると、『ニコ動の歌い手です』とのこと」(K氏。以下同)
ニコ動とは動画サイトの「ニコニコ動画」のことで、歌い手とは、自分が歌っている動画を投稿している人のことだ。念のためK氏が別の生徒にも同じ質問をすると、その生徒はアニソンの歌手の名前を次々と挙げたという。もちろん生徒がどんな音楽を好むかは自由。しかしK氏が驚いたのは、音楽レベルの“格差”だったという。
「教えることが何もないぐらい音楽知識が豊富な子がいる一方で、『カラオケの点数が良いから歌手になろうと思った』『ゴールデンボンバーみたいになりたい』というだけで、楽譜が読めない生徒や、楽器が何もできない生徒もたくさんいました」