予算の前に「腕」は及ばない
しかし、予算の都合上そんなことはできません。となれば、その大阪のライターより腕は劣るものの総予算を下げることができる東京(ないしは近郊)のライターに話が来ることになるのです。
最近はネット系企業もメディアを多数立ち上げていますが、そうした企業が立地するのは渋谷や新宿が多いです。打ち合わせにしてもこうしたエリアでやることになるので、そこに参加する融通をつけやすいライターに話がいきます。
また、ライターの仕事というものは「明日だったら〇〇社長が時間を作ることができるらしい! 誰か取材行けないか!?」みたいなことも案外多いです。そんな時に「オレ大丈夫です!」と言えるフットワークの軽さも「あいつは使い勝手がいい」みたいな感じで売れっ子のライターになる要因の一つだったりもします。
日本の文字コンテンツの発火点が「東京偏重」ともいえる状況にある今、案外「場所」は重要です。ライターの速水建朗さんと同氏の著書『東京どこに住む? 住所格差と人生格差』をめぐり対談をしたことがありますが、同書には「どこに住むかで人生が変わる」といった記述がありました。
私はここ17年、常に渋谷周辺を拠点としておりますが、速水さんは「それこそ仕事が続く理由じゃないの? 中川さんは一貫して渋谷周辺に居続け、渋谷の企業との関係を深めてきた。だから仕事がある」と私に指摘をしました。確かにそうだと思います。渋谷という文字コンテンツ需要がたくさんある街を拠点とすると、そうした企業との付き合いが深くなるのです。