例えば、入院費は親に払わせる。墓は親が存命中に買い、葬式代も互助会などに必要な額を全額かけておいてもらう。いっそ、子供が生前贈与や孫への教育資金贈与として受け取ってもいい。そうして親の金融資産をゼロにする。そのうえで遺産として残った不動産を「相続放棄」すれば子は将来の費用負担がなくなる。
このやり方なら、兄弟間の相続争いも避けられる。
「オレは家はいらないから金がいい」
「オレもあの家はいらない」
「親の介護や入院費の面倒を見たから現金を多くもらいたい」
そんな相続争いが起きそうなときも、子供が親の介護をした時は「対価」としてお金をもらうなど、親が存命なうちに財産を分けて金融資産を“ゼロ円”にしておけば、争いに発展することはない。残った不動産はそれぞれが放棄するかどうかを判断すればいい。ベテラン税理士が語る。
「生前贈与や教育資金贈与をもらったうえで、残った財産を相続放棄することは可能です。注意点は、親に借金があった場合。債権者から借金を踏み倒すための詐害行為だと訴えられて贈与を取り消される可能性があります。借金がなければ、その心配はない」
放棄するデメリットを予め減らしておく。そうした準備を含めての「得する相続放棄」なのだ。
※週刊ポスト2018年6月1日号