いわゆる音痴や、スポーツが苦手な“運動音痴”、料理の美味い・マズいの感覚が人とズレている“味音痴”なら笑いに変えることも可能だが、同じ音痴でも日常生活を送る上で支障が出るのが、方向音痴。自他ともに認める方向音痴の40代女性・Yさんが、自らの方向音痴エピソードを語る。
「とりあえず自分が方向音痴だということは分かっているので、可能な限り迷う可能性は排除します。普通の人なら歩く場所にタクシーで向かうことはしょっちゅうで、余計な出費を余儀なくされます。歩いて届けられるはずの距離なのに郵便を出すこともあります。
方向音痴だからタクシーを使っているのに、運転手さんから『道どうしますか?』と聞かれると本当に困ります。『お任せします』と伝えているのに、『新人なので、道をよく知らなくて……』とか言われると、タクシーを降りたくなることも。新宿駅で西口から東口に行く時は、迷うことが分かっているので、入場券を買ってホームを移動します。
雨だったり、夜になったりすると、より危険です。方向音痴ながら、なんとなくお店の電気などを目印にしているからでしょう。知っているはずのところが、まるで見知らぬ街になります。歩道橋も1回上ると途端に方角が分からなくなって、たいてい2回くらい上り下りします。地下鉄の出口は一番苦手で、8割ぐらいの確率で、出た後の進行方向を間違えます」
ここまでのエピソードなら、方向音痴を自覚する人には理解してもらえそうだが、Yさんの方向音痴は、そのワンランク上を行っている。初めて行く場所でなくても、Yさんの手にかかれば(?)迷う対象になってしまうのだ。
「神奈川県のニュータウンに引っ越した頃、周りが全部似たような建売住宅だったため、途方に暮れました。家に入りかけたところで、その家のお母さんの声が聞こえて、初めてそこが違う家だったと気がついたことも……。学校に遅刻して行った時、授業中の廊下など、いつもと違う雰囲気の校舎にワケがわからなくなって全然違う教室に入ってしまい、とても恥ずかしい思いをしたこともあります。ただでさえ方向音痴なのに、いつもと雰囲気が変わると、さらに何がなんだかわからなくなるみたいです」