私も真麻さんも驚きました。いただいたらお返しをするのが当たり前のマナーだからです。真麻さんは後でこっそり私に囁きました。
「こういうのって、“考え方の違い”がわかりますね」
真麻さんは、いわゆるお嬢様系の女子校出身。遠回しに、“育ちの違い”を言っているのです。
でも、お嬢様学校にもいろんなタイプの家庭があります。代々の土地持ちで、昔から港区に住んでいるようなお金持ち。お父様が一代で財を築いた実業家のおうち。一流エリートビジネスマンの家庭。
その中でも、「代々のお金持ち」は一味違いました。私の通っていた、世間的にはお嬢様学校と言われる私立の女子校にいた桜さんは、おじいちゃまが地主で、ご両親もお父様が慶應出身のビジネスマン、お母様も聖心出身。
そんな桜さんは、私が学校のことで落ち込んでいたとき、可愛い花束を買ってきてくれました。
「お花って癒されるでしょ? 私が大好きなお花屋さんで選んだの。ピンクと黄色がかわいくて。元気出してね」
桜さんは、私以外にも、元気がなさそうな同級生や後輩に時折お花を買ってきてくれました。不思議と、彼女がやると嫌みではありません。親がお金持ちなのをひけらかすわけでもなく、友人も多かったのを覚えています。