古市さんが経営する御用聞きは、5分100円からの家事代行を行う会社だ。電球や電池の交換、宛名書きなどを請け負う。「ビンのフタを開けてほしい」という依頼が全体の1割にも及ぶという、人の小さな願いに寄り添う仕事である。
ほかにも「たすかるサービス」として、家具や粗大ゴミの移動、大掃除の手伝い、浴室のカビ取り、トイレ掃除やパソコンの設定サポートまで用意。これらは作業の難易度が少し上がるものとして、5分300円~のメニューになる。都内をバイクや車、自転車で駆け回り、人々の困りごとに立ち向かうのが古市さん率いる御用聞きの日常だ。
足が悪く杖をつかなくては歩けない60代の男性からの依頼は、自宅からスーパーまでの買い物の付き添いをしてほしいというものだった。唯一の社員である松岡健太さん(24才)が駆けつけると、米やビールなど、重いものは1人では運べない状態。
「お体は大丈夫ですか? 病院には行っていますか?」
「生協とかに頼んで家に持ってきてもらった方が安いかもしれないですよ」
冒頭の片付け作業と同様に、「御用聞き」を行う彼らは積極的に話しかける。依頼者と関係性を深めてゆくのだ。
何度か通ううち、その男性が介護保険に入っていないことがわかった。松岡さんは関係機関に連絡し、手続きに付き添った。そうして地域包括支援センターやしかるべき公的な機関に繋ぐこともままある。
ある80代の女性依頼者は、医療ノート、看護ノート、介護ノートと3冊持っていた。サポートをする人たちが情報共有するためのものだ。そこにいつの間にか「御用聞き」ノートが加わる。御用聞きのスタッフが依頼された内容、作業の際の様子や会話を書きとめておく。それはそのまま彼女の生活記録になる。
「個人のニーズに応えながら、地域社会の課題解決を果たすソーシャルビジネスを確立したい」
古市さんはそう話す。
※女性セブン2018年6月28日号