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人の命を救う力にもなり得る「100円御用聞き業」が生まれるまで

 その感性は大人になってからも変わらず「ゼロからイチを生み出す」ことに、強い欲求を持ち続けた。

 過去最低の有効求人倍率を記録した2000年、本格的な就職氷河期がスタートした年に、古市さんは、第1希望の不動産会社に内定を決める。大学の同級生の中で最速だった。

 しかし、大学3年生のとき、祖父と父が時を同じくしてがんを患う。就職した年の年末、顧問弁護士に呼び出され、会社を継ぐよう言われた。だが古市さんはこれを拒否。独立資本で起業する夢は譲れなかった。

「親の会社も継げないヤツが社長になんかなれるか! 社長になりたいなどと二度と言うな!」

 ゴンッ。顧問弁護士の拳がテーブルに叩きつけられ、グラスが揺れた。

買い物代行サービスの失敗、わずか1年で倒産寸前に

 それでも自分の意志を貫いた古市さんは、年末には会社を退職。不動産仲介業を開始。UR(独立行政法人都市再生機構)をクライアントに大きな成功を収めた。

「朝から葉巻を吸ってジャズを聴いていました。自分は凄いと、大きな勘違いをしていた時期です」(古市さん)

 高級ブランドのスーツに身を固め、外車を乗り回した。27才で結婚もした。しかし、子供の頃に夢見た「ゼロからイチを生み出す事業」ではない。そこでインターネットを活用した買い物代行サービスを思いつく。2009年のことだ。

「当時、新聞やテレビで高齢者が買い物難民になっているというニュースが頻繁に流れていました。ここにビジネスチャンスがあると考えました」(古市さん)

 高齢者の買い物を、地域の子育て世代が100円で代行するというアイディアだった。が、結果は散々。登録会員は100人ちょっと。最終的に社員7人の給料も払えず、土下座するように頭を下げ転職してもらった。わずか1年で倒産寸前に。人生初にしては大きすぎる挫折だった。

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