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人の命を救う力にもなり得る「100円御用聞き業」が生まれるまで

 損失は約1億7000万円。調子に乗っていた自分があまりに情けなく、「人として生きる価値がない」とまで思った。うつ的な症状からか、体がふらつき、アスファルトの上に倒れ込んだこともある。

 しかし、当時は長女が生まれたばかり。子供の未来を置き去りにして、人生を閉じるわけにはいかない。人間、追い込まれたときこそ誠実であるべきだろう。なんのサービスも届けられなかった登録会員のもとへお詫び行脚に出ることにした。

 一軒ずつ訪問すると「娘が勝手にやったから私は知らないの」と拍子抜けするほど、自分の失敗に誰ひとり関知していなかった。それどころか、“別のお願い”をされる始末。

「謝罪なんていらないから、ちょっとあの棚の上にあるもの、取ってくれない?」
「2000円でお風呂場のカビ取りやってくれない?」
「3000円あげるから草むしりやって」

 せめてもの誠意だと、すべて請け負った古市さん。全員が一様に「ありがとう! 本当に助かった」と満面の笑みを浮かべるのだった。

「こんなことお願いするなんて申し訳なくて」

 ある高齢の女性宅を訪ねると、玄関のドアが30cmほど開け放たれていた。インターホンを押したが、故障している。

「すみませーん。いらっしゃいますかー」

 そう呼びかけながら入ると、薄暗い部屋で女性がテレビを見ていた。聞けば、インターホンが壊れており、女性は直し方がわからない。

「でも、ヘルパーさんにそんなこと頼めないじゃない。こんなことお願いするなんて申し訳なくて」

 彼女たちが来訪するとすぐに気づけるよう、ドアを半開きに。夜も開けたまま寝ているという。

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