2019年3月卒業予定の大学生の就職活動が終盤戦を迎えている一方で、2020年3月卒業予定の大学生の就活が早くも始まっている。学生を大学名でこっそりふるいにかける「学歴フィルター」は今も健在だ。『学歴フィルター』(小学館新書)を上梓した就職コンサルタント・福島直樹氏がある商社の事例を解説する。
* * *
ある商社では現在、エントリーシートの書類選考で学歴フィルターを用いている。導入のきっかけは何だったのだろうか。
以前から同社では、若手社員のうち人事評価で上位3割に入った者と、下位3割の者の行動特性を分析している。その際に新卒採用時、中途採用時の性格検査の結果との関連性も調べている。
するとある傾向が見えてきた。その傾向とは、上位層は批判性が高く、下位層は批判性が低いというものだ(下位層は従順性が高いという結果も出た)。
ここで言う批判性とは「クレームをつける」「自己中心的」ということではなく、批判的思考力(クリティカルシンキング)のことだ。つまり上位層は自分の意見があるが、下位層は自分の意見がないのだ。これが人事評価と深い関連があることがわかってきた。
上位層は与えられた仕事について、いかに効率的にやるか、顧客や上司は何を求めているのか、などを考えながら取り組んでいた。反対に下位層は考えることなく、言われたことを何となく、漫然と作業していた。
そこで新卒採用の面接でも就活生の批判的思考力の有無を確認するようになった。これを性格検査の結果と照合してより正確性を高めるのだという。
具体的には、あらかじめ用意した質問に対して、学生が自分自身の意見を持っているかどうか、そこに批判的思考力があるかどうかを確認していく。質問の内容は吟味して、できるだけ学部学科により有利不利が出ないように配慮してあるのだそうだ。例えば次のような質問だ。
「新しく祝日を作るとしたらいつにしますか?」
これに対して「6月には祝日がないので梅雨の日を作りたいです」という回答がよくあるそうだが評価は低い。反対に評価が高かった事例はこうだ。
「個人消費を刺激することを目的に10月に土日ふくめ1週間程度の連休を作ってはどうでしょうか」