アメリカのドナルド・トランプ大統領は米朝首脳会談後の会見でわざわざ“安倍の頼みを叶えてやった”と強調してみせた。
「首脳会談では拉致問題も取り上げた。安倍首相の最重要課題だからだ。共同声明には盛り込まれていないが、これから協議していく」
それに対して安倍晋三・首相は「高く評価する。感謝したい」と頭を下げたが、トランプ氏の言葉の裏に、“約束通り金正恩に伝えたぞ。今度は日本が口利き料を支払う番だ”という「真意」が隠されていることをしっかり読み取ったはずだ。
2人の“大口商談”は6月7日の日米首脳会談でまとまった。安倍首相は米朝会談直前に訪米してトランプ氏に北朝鮮への拉致交渉の口利きを依頼し、その際、見返りに米国から巨額の兵器を購入することを約束した。
本来、首脳同士のこの類いの密約は表に出ることはない。日本の外務省が日米首脳会談直後に発表したニュースリリースでも、会談の内容について、〈安倍総理から(中略)防衛装備品や日本企業による米国産エネルギーの購入額の増大等を説明したのに対し、トランプ大統領から一定の評価が示されました〉としか書かれていなかった。
ところが、それをトランプ氏自身が暴露した。日米共同記者会見の冒頭、「billions and billions dollars」(数十億ドル)という金額をあげて商談の詳細をこう明らかにしたのだ。
「安倍首相はつい先ほど、数十億ドルもの戦闘機やボーイング、農産物などあらゆる製品を購入すると言った」
この発言は会見用の草稿にはなかった大統領のアドリブとされ、隣で聞いていた安倍首相が“エッ、そこまで明かしちゃうの?”と表情を強ばらせたのが印象的だった。あとで値切られないように、「口利きの報酬額」をあえて明示しておく。ビジネスライクなトランプ流のやり方とも言える。