田代尚機のチャイナ・リサーチ

米中の追加関税報復の応酬、トランプ氏の貿易政策激変の可能性も

7月6日まで神経戦が続くか(Getty Images)

 米トランプ大統領の暴走が止まらない。トランプ政権は5月31日、EU、カナダ、メキシコに対して一時的に猶予してきた鉄鋼、アルミニウムへの追加関税措置について、他国と同様、順に25%、10%の追加関税をかけると発表した。6月8日、9日にカナダで開かれたG7首脳会議で、トランプ大統領は冒頭、アメリカの貿易相手国を激しく批判した。9日には、首脳宣言が採択され閉幕したが、その後、カナダのトルドー首相が会見を行い、米国の追加関税措置を批判したことで、トランプ大統領は激怒、ツイッターを通じ首脳宣言を承認しないと表明した。

 一連の騒動についてドイツのメルケル首相は、「大きな失望を感じている。トランプ大統領の決定が環大西洋貿易投資パートナーシップ関係を終わらせるといったわけではないが、我々は、安易にこのパートナーシップ関係に依存し続けるわけにはいかなくなった。G7の枠組みを放棄するわけではないが、ドイツはロシアと対話を求めていかなければならず、日本、カナダ、インドや中国と密接に協力していかなければならない」と述べている。

 一方、トランプ大統領は、中国に対しても正面衝突を辞さない強気の姿勢を示している。

 トランプ政権は15日、「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」(*注)について言及、関連する製品を含む1102品目、500億ドル相当の輸入製品に対して25%の追加関税をかけると発表した。2段階に分けて実施。まず、第1段として340億ドル相当分について7月6日より、追加課税を実施する。残りの160億元に対しては、さらに評価を行ったうえで実施する。

【*注:2015年5月に中国政府が発表した、中国における今後10年間の製造業発展のロードマップ】

 これを受けて中国商務部の報道官はすぐさま、「即刻、同規模、同程度の追加関税措置を実施する。これまでに双方が合意に達した話し合いの成果はすべて失効する。貿易戦争は世界全体の利益に反する。我々は各国と行動を共にし、この時代遅れ、時代に逆行した行動をやめさせ、人類共同の利益を断固として守る」と厳しく反発している。

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