車の話題が溢れるなか、霊柩車が取り上げられることは少ないが、「霊柩車の運転手」とはどんな仕事なのか? 霊柩車の運転手歴が30年近くに及ぶ男性Aさんによれば、苦労は色々あるようだ。
「私は、御遺体を乗せている時に交通事故を起こしたり、交通違反で捕まったりしたことはありませんが、同僚には交通事故に遭ったという人もいます。交差点で停車した時に、後ろからぶつけられ、そういう時は通常の交通事故と同様、警察を呼んで処理をするそうです。そもそも運転をしている限り、事故をゼロにすることはできません。自分ではいくら気をつけていても、“もらい事故”は避けられませんから」(Aさん。以下同)
緊急車両を除けば、道路上ですべての車は対等だが、霊柩車はやはり少々特殊な車。ただ、霊柩車なら後ろから煽られたり、クラクションを鳴らされたりしないかと思えば、そうでもないという。
「20年ぐらい前までは、『宮型霊柩車』というお神輿のようなタイプのものが多く、周りの車は車間距離をとってくれたものでした。しかし最近は『宮型』が減り、『洋型霊柩車』が増加。『洋型』は霊柩車だと分からない人もいるようで、急な割り込みをされたり、『エラそうな外車に乗りやがって』と言わんばかりにクラクションを鳴らされたという話も聞きます」
黒塗りでキンキラキンの宮型霊柩車は、確かに見かける機会が激減している。その裏にはこんな事情があるそうだ。
「ウチの会社には霊柩車が10台近くありますが、『宮型』は1台もないので、リクエストが入った時は、ヨソから借りてきます。『宮型』が減ったのは遺族側の『派手にしたくない』という意識の変化もあるようですが、葬祭場の近隣の住民から嫌われるという理由のほうが強いようです。多くの葬祭場の周囲では、霊柩車乗り入れ禁止区域があって、霊柩車が通るルートが定められています」