売り手市場とはいえ、圧倒的に狭き門なのが、超人気企業への就職。大手マスコミなどは倍率が1000倍近くになることも珍しくないが、一方でそういった企業にコネで入る人もいるのが現実だ。一般学生が苦労に苦労を重ねて人気企業を目指すなか、コネというものの不条理さを周囲の人間に存分に知らしめたのが、大手広告代理店で働くOさん(30代)のケース。もちろんコネ入社でも優秀な社員はいるが、「中にはとんでもない者もいる」という実例を紹介しよう。
Oさんは、大手企業の創業者を父に持つ男性。彼が大学生だった頃、その会社はテレビCMをバンバン流しており、年間CM出稿量がベスト10に入るほどの勢いだった。Oさんは就職活動をする気はまったくなく、友人たちはてっきり父親の会社に入るものだと思っていたが、本人はある時突然「広告代理店に行く」と宣言した。Oさんの友人で、事情を良く知る男性Mさんが語る。
「もともと多少は会社を継ぐ気もあったようですが、一方でワンマン社長の父の下で働くのはイヤ。そこで『一度、外の世界を見たい』と言い、広告代理店に入りたいと言ったようです」
父親は息子の主張を受け入れ、付き合いがある代理店に口利きを頼むと、代理店側は即採用面接の段取りを設定してくれた。しかし根っからのボンボンのOさんは、そこでやらかしてしまう。Mさんが語る。
「せっかく父親がレールを敷いてくれたのに、寝坊をして面接をすっぽかしたのです。普通の学生なら、遅刻だけでも採用が見送られそうなものです。しかし父親のコネの強さはハンパなく、改めて面接の日が指定されました。周りの者はみな、呆れて物が言えないという感じでしたが、彼も流石に今度は時間どおりに面接に行き、無事内定をもらいました」