人民元安が加速している。銀行間取引市場における人民元対ドルレートの今年最高値(場中ベース)は3月27日に記録した1ドル=6.2409元であった。その後緩やかに下落、6月に入ってからは一旦、わずかではあるが元高に傾いたものの、15日以降は急落している。6月14日の終値は6.3979元で、安値からは2.5%元安に過ぎない。しかし、7月2日の終値は6.6631元で、わずか2週間強で4.0%元安となっている。
今回の元安について中国本土マスコミではおおよそ以下の3点を要因として挙げている。
【1】ドル指数の上昇
4月中旬から5月末にかけて強い上昇トレンドが出ている。その後は上げ下げを繰り返してはいるが、緩やかな上昇が続いている。
【2】金融政策の違い
アメリカは利上げ、中国は預金準備率の引き下げ(ただし、実施は7月5日)を行っており、米中金利差は縮小気味である。
【3】貿易黒字の縮小
1~5月の貿易黒字(ドルベース)は26.8%減少、第1四半期の経常収支は、ほぼ15年来の赤字となった。
ただし、これらの要因はあくまで背景に過ぎない。6月15日以降、急落しているが、この日、ホワイトハウスは、「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」(*注)について言及、関連する製品を含む1102品目、500億ドル相当の輸入製品に対して25%の追加関税をかけると発表した。米中貿易紛争の激化が元安の直接的な要因だと考える方が自然であろう。
【*注:2015年5月に中国政府が発表した、中国における今後10年間の製造業発展のロードマップ】
輸出が鈍化、貿易収支が悪化、景気が減速するのではないか。市場参加者は中国経済への影響を懸念し、人民元を売ってドルを買う動きを強める。しかし、それ以上に、中国人民銀行がアメリカへの対抗策として、元安誘導するのではないかと考え、市場参加者は人民元安側にポジションを取る。