都内の電車から車窓を眺めていると、あちらこちらで見かけるのがタワーマンションの建設現場。人気の街だからタワマンが建つのか、タワマンが建つから人気の街になるのかは不明だが、とにかくタワマンは人気があるようだ。しかし、大手不動産会社の中堅社員Yさんによれば、不動産会社にとってタワマンというビジネスは、苦労ばかりで実入りが少ない実態もあるという。Yさんが語る。
「タワマンクラスの建設現場となれば、広大な用地を必要としますので、土地取得交渉は困難を極めます。例え1軒でも立ち退かなければマンションは建ちませんし、完成が遅れれば遅れるだけコストもかかります。先輩からは、立ち退き交渉で『ペットの散歩までやった』『一升瓶を持参して、売却を渋る住民と膝を突き合わせて茶碗酒を飲んだ』なんて話も聞かされました」(Yさん。以下「」内同。)
あるプロジェクトでは、計画が持ち上がってから土地取得が完了して着工に至るまでに10年近くかかったこともあると語るYさん。いよいよマンションを建て始めると、これまた苦労の連続だという。
「工事が始まっても苦労は絶えません。例えば、建設現場には毎日大量の工事用車両や関係者が出入りしますが、騒音を抑え、安全を確保するだけでも、莫大な労力を必要とします。クレームが入れば、それが言いがかりのようなものでも、ひたすら頭を下げるだけです。
現場の作業員は、見た目がいかつい人が多いためか、『怖い』というクレームが寄せられたこともありますし、彼らが吸うタバコが問題になったり、作業員同士でケンカが起きたりと、トラブルが起こらない日はありません。作業員がケガをしても、救急車が来ると騒ぎになるので、タクシーで病院に行かせたこともあります。
ゲリラ豪雨が降った時に、現場から砂利が大量に流れ出し、ある商店の軒先に溜まってしまったことがありました。そのお宅は地元商店街の会長のお店で、建設反対派の急先鋒だったので、背広組まで駆り出して必死で砂利を片付けました。その時は『ご迷惑をおかけしました』ということで、現金入りの封筒も持って行きました」