新築マンション価格と正比例する形で、中古マンションも高騰が続いている。近年でもっとも低水準だった2013年、首都圏の中古マンションの平均坪単価は137万2000円だったが、2018年の1~5月の集計では177万6000円と、5年間で約3割も上昇。東京23区内に至っては265万5000円で、2009~2012年の新築マンション価格とほぼ変わらない高値で推移している。
買い手にとっては厳しい状況だが、売却を考えている人にとってはチャンスでもある。不動産の市況調査を手がける東京カンテイ市場調査部の井出武・上席主任研究員によると、現状の相場は「エリアによってはすでに天井に近い」という。
「東京の場合、超一等地を除いて23区内の中心のエリアほど上がりが鈍ってきています。やはり中古で坪単価が250万円を超えるとなかなか手が出ない。売却を検討しながらも好機をうかがっている人の中には『まだ上がる』と考えている方もいるかもしれませんが、よほどの好立地でなければこれ以上の値上がりを期待するのは難しいでしょう」(井出氏、以下同)
また、不動産業界にも人口減少社会の波が押し寄せてきており、地域によって需要の二極化が進んでいくことは避けられない流れだという。中古マンションについては2016年以降、売り物件が需要を超えて市場に多く出回る買い手市場化が進んでいるが、在庫の増加でその傾向に拍車がかかり、徐々に売りにくい状況に陥っていくことが予想されている。
「都心から1時間以上離れた郊外の物件については、すでに『売れにくい』という話も出てきています。加えて来年に予定されている消費増税後は市場の一時的な冷え込みが予想されるので、立地の厳しい物件については手放すべきタイミングかもしれません」
今後は「都心から遠ければ遠いほど値段が下がりやすい」という傾向がさらに加速し、郊外の物件はより売りにくくなる可能性が高い。その一方で、2000年代前半に都心部にマンションを購入した層は非常に有利な状況にあるそうだ。
「2000年から2005年ごろにかけて、都心回帰の流れの中で廉価な新築マンションが数多く登場しました。そのころに購入した立地のいい物件ならキャピタルゲイン(売買差益)が出るケースもあります。もし購入後15年ほど経過してライフスタイルに変化があるのであれば、ダウンサイジングの買い替えなども選択肢に入るのではないでしょうか」